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雪国三人組と俺とブウサギ
「お〜い、ガイラルディア〜!」

俺に威勢良く声をかけてきたのは知っての通り、ピオニー陛下だった。

・・・そう、俺は今、ピオニー陛下の下で働いているガイ・セシル。
本名はガイラルディア・ガラン・ガルディオス。
・・・まぁ、そんなことはどうでもいいな。

今、ようやく世界をレプリカだけにしようとしていたヴァンの望みも消えた。
そしてこうやってみんな、自分のいるべき場所へ帰ったのさ。
俺は元々、マルクトの人間だ。
だからマルクトの陛下の下で働けるようになったのはいいんだがなぁ・・・。

「ガイラルディア!呼んでるだろ。今日もブウサギのブラッシング、よろしくな!」

・・・仕事はブウサギ関係のみなんだ。
これで仕事といえるところが、この陛下の恐ろしいところだったりする・・・。

「はいはい・・・わかりましたよ・・・。」

俺そう言って、陛下の手から高級ブラシを受け取った。

「ん?何だその不満そうな声は?」

やっぱりバレるよなぁ・・・。

「いえ、別に何〜にも不満なところはありませんが。」

・・・この後陛下がちょっと機嫌を損ねたのは言うまでもない。

・・・まずは(ブウサギ)ルークからだな。
最近やっと俺はブウサギの識別ができるようになってきた。
こう毎日ブラッシングや散歩してるからなぁ・・・。
出来て当たり前・・・か。
と思いながらルークの前にゆっくりと腰掛ける。
同時にピオニー陛下もどこからか椅子を取り出してきて、ドカッと勢いよく俺の近くに座った。

「おぉ〜俺の可愛いブウサギたち!今ガイラルディアがブラッシングをしてくれるからなぁ〜。うんうん、お前たち今日も可愛いなぁ〜。あ、ガイラルディア。昨日ネフリーがな〜。」

そしていつものように語り始めたブウサギ馬鹿。

「はいはい・・・。」

毎日毎日陛下のブウサギ自慢話を聞き、ジェイドにけなされ、ブウサギのお世話。
そしてこの頃こっちのメイドたちにもいじめられる・・・。
バチカルでも散々だったが、こっちもなかなかだ。
会った途端に追いかけっこになることだってある。
もちろん全力で逃げる方は俺だ。
女性恐怖症の体質で遊ぶのはやめて欲しいな・・・。
はぁ・・・辛い・・・。

「でな、可愛いブウサギのジェイドがな、も〜ホンット可愛かった!あくまでもブウサギの、だけどなぁ。ははは。」

「そうですね、はいはい・・・。」

俺はいつまでこうしていればいいのだろう・・・。
いつか中断してくれることを信じて、陛下の方を向かず、そしてブウサギのブラッシングを断固やめない。
しかし、まったくにして俺のささやかな抵抗は無駄だった。
無視されているのを知ってか知らないでか、陛下はそのまま話し続ける。

「アスランも勇ましかったぞ!さすが俺のブウサギだな。」

「陛下が育てているだけありますね。」

「そうか?そうだな、ははは。」

一向に止めてくれる気配はなし・・・。
もうここから飛び出したい気分になってきたぞ・・・。
そして陛下、お世辞で無邪気に笑ってるよ・・・こっちは大変なのになぁ・・・。
暇だったらジェイドとネフリーのブラッシングがまだ終わってないんで、やって下さいよ・・・。

「あ〜そうだ。昨日サフィールがな、ルークの餌を取っちゃったんだよ。も〜ルークマジギレしちゃってなぁ。」

「はは・・・それは大変でしたね。」

普通のルークもご飯取られたらマジギレだろうな・・・。
あ〜ルーク今何してるかなぁ。
次に会う頃には料理が少しでも上達してればいいんだが・・・。
ま、剣の修行かな、一人で。
時々都合がついたら会いに行ってやるかぁ!
一人で孤独に、なんて可哀想だもんな。
まさかアッシュのことで悩んでる・・・とかないだろうな?
不安になってきた・・・。

「一番おもしろかったのがゲルダ。ルークが怒ってるの見て何を思ったのか知らんが、ブーブー言い争ってる2匹の上にダイビングしたんだよ〜。今度は3匹で大喧嘩。止めるの大変だったんだからな〜。」

「それは大変でしたね・・・。」

「お前・・・本当は確実にそう思ってないだろ?」

・・・やっと気づいてくれましたか陛下・・・。

「はは・・・ちゃんと思ってますよ。」

・・・誰かこのブウサギ馬鹿を止めて下さい。


と、まぁこんな調子で全部のブウサギのブラッシング終了。
陛下は、

「いつもありがとな。・・・おっともうこんな時間か。会議に行ってくる。じゃ、ブウサギちゃんたちのお散歩、よろしくなガイラルディア♪」

とだけ言い残し、嵐のように騒がしく部屋を出て行った。
まったくよくわからんお方だ・・・。
とため息をついた。
ため息くらい、つきたくもなるよ・・・。
俺はいつまでこの生活を続ければよいのだろうか・・・。
ブウサギに囲まれる毎日。
・・・というか何故俺はこんなことを引き受けているのだろう・・・。
本当にこのまま一生を過ごすのだろうか・・・。
冗談じゃないぞ・・・!


と考えていたら、いつのまにかブウサギたちを連れて町に出ていた。
本能的に、体が勝手にブウサギの散歩をする俺・・・。
なかなか悲しいものだなぁ・・・自分で言うのもなんだが。
いつも、右手に3本、左手にも3本ブウサギたちのリードを持って散歩だ。
もしかしたらリードが外れてしまって、ブウサギたちが逃げ出さないかハラハラする。

しかしなぁ・・・
いつものことながら、こうブウサギたちを六匹も連れて散歩していると・・・。
周りの目がすごく嫌なんだ・・・。
何故か一人も俺に近づこうとはしない。
むしろダッシュで遠ざかってゆく子供さえ・・・。
いや、わかっている、そんなことくらい俺でも理解できる。
だが・・・したくないぞ・・・。
大の大人がブウサギたちの散歩してる・・・なんて変な奴。
と思われているに違いないなんて・・・理解したくない。
きっと違う、きっと。

陛下・・・なんですかこの仕打ちは・・・?
新手のいじめですか!?

とか文句を心の中で言いつつ、綺麗な町々を過ぎてゆく。
周りの人を気にしなければ、最高な所だ。
あくまでも気にしなければだがなぁ・・・。
いや、いつもは普通に歩いているぞ、街中を。
まぁいつもブウサギの散歩してる奴だ、と気付いた奴は即座に逃げ出すけどな・・・。

「ブーブー。」
と、一番左のブウサギ・・・お、ジェイドか。
ジェイドが突然鳴き声をあげた。
いつものことながら、恥ずかしいので下を向きながら歩いていた俺。
なのではっとブウサギの方を見たら、視界の中に見慣れた人間が現れた。
その(ブウサギ)ジェイドの瞳は一直線に、俺の視界の中にもいる軍人服のあの男を見ていた。

「ジェイド!」

そう、なんとまぁ奇遇に旦那と会ってしまった。
こんな姿で・・・。

「・・・どなたですか?ブウサギを連れて街中を堂々と散歩している人間に、知り合いはいませんよ?」

久々に会ってそのセリフか旦那・・・。
それよりジェイドは、確か陛下の任で・・・遠征に行っていたはずだ。

「はは・・・酷いなジェイド。もう遠征から帰ってきたのか?」

ジェイドは周りをちらっと見て、言った。

「冗談ですよ。・・・他の人がいないからいいですけど、仕事関係のそういうことは出来るだけ街中で言わないで下さい。遠征からは今帰りました。」

俺は少し苦笑いをしてすぐに謝った。

「あ、悪い。すっかり忘れてたよ。」

「わかればいいんです。」

少し機嫌を直したジェイド。
一安心だな・・・。

「そっちはブウサギの散歩ですか〜。大変そうですね♪」

いやいやいや・・・すっごい笑顔でそんなこと言われても・・・。

「絶対そう思ってないだろ旦那・・・。」

「とんでもない。と〜〜〜っても思ってますよ。では、頑張ってくださいね♪」

「その最後の♪は何だ旦那ァ!!」

ルンルン気分で踵を返したジェイド。
機嫌早変わりだなぁ・・・。
何か俺と陛下みたいな関係だな、と一瞬俺は思った。
話の流し方が俺と少し似てるよ旦那・・・。
さてと・・・俺もそろそろ帰るかな。

そう、俺はジェイドと一緒に宮殿へ向かおうとした。
その時・・・後から叫び声が聞こえた。

「待ちなさいジェイドォォォォォ!!」

この声は・・・。
ジェイドが俺の前で大きいため息をつく。
そして今度は(ブウサギ)サフィールが鳴き声をあげる番だった。

「今日こそはあなたをギッタギタンのめっちゃめっちゃにしますからね!」

ディスト・・・今日も元気だなぁ・・・。

「ガイ、馬鹿は放っておいて行きましょう。馬鹿に付き合うと馬鹿になりますからね〜。」

馬鹿三連発・・・しかもそこだけ強調。
相変わらずディストに厳しいな旦那・・・。

「馬鹿馬鹿言わないで下さいよ!私だって少しは・・・・・・わっ!」

ディストの空中椅子がズドンと倒れた。
どうやら、ブウサギサフィールがディストに体当たりしにいったらしい。
おかげで俺はリードをいきなり引っ張られて危うく転びそうになった。

「何ですかこのブウサギは!離れなさい!」

とディストが頑張って叫んでも一向に離れようとしない(ブウサギ)サフィール。
これじゃ俺も帰れない・・・。

と、そこに救世主が現れた。

「おお!おもしろそうなことやってるなぁ〜サフィール。俺も混ぜてくれ。」

絶対に救世主とは言えないが、陛下がディストの椅子の後から声をかけた。

「な、何であなたがここに!?」

「いや、俺の国だし。」

陛下即答・・・。

「そういうことではなくて、何で宮殿にいないのですか!?」

「会議だったからな。はっはっは。」

ディストの方にはおもしろいこと一つもありませんよ、陛下。

「お、ジェイド〜!遠征から帰ってきたのか。ご苦労だったな!」

やっと陛下はジェイドの存在に気付いた。
旦那はため息をつきながら言った。

「陛下、それをどうにかして下さい。」

ディストが声を張り上げて叫んだ。

「ちょ、それって私のことですか!?物扱いしないで下さいよ!!」

あ〜・・・一応わかってはいるんだな、自分のことだって・・・。

「おや〜?物が喋ってますね。これは怪奇現象でしょうか?さ、陛下。ガイが呆れてますし、帰りましょう♪」

「キ〜!待ちなさい!まだブウサギが引っ付いて・・・ちょっと、待って下さいよ!」

ディストがブウサギに捕まっているのを見て、気分ルンルンの陛下は、スマイル満点で言った。

「久しぶりに会ったんだから何かしようぜ。ん〜・・・お!誰が一番ブウサギに愛されてるか対決!いいねぇ!もちろんネフリーにな♪」

この中で一人だけ楽しそうな陛下・・・。
ディストは陛下の提案を即座に全否定した。

「そんなのやりませんよ!それよりこのブウサギをどうにかして下さいっ!」

「も〜愛されてるなサフィール〜。あ〜ジェイド!お前も参加だ。有無は言わせん。マルクとの陛下命令だからな。」

それを聞いたジェイドは、顔色一つ変えずに呆れた口調で喋った。

「知りません。3人でやって下さい。」

ん?
3人・・・?2人の間違いだろう?

「ん〜しょうがない奴だなぁ。じゃ、3人でやるか。ガイラルディアもサフィールも強制参加。じゃ、やるぞ〜♪」

誰でもいいからこの日常から助けてェェッェェェェ!!