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バレンタインデー小説1
「ねぇねぇ、2人とも!」

女性三人で買い物をしていたところに、アーチェが突然尋ねてきた。

「もうすぐ・・・バレンタインデーだよね?ミントは誰かにあげるの?やっぱりクレス?」

ニヤニヤして喋っているアーチェとは正反対に、ミントは急に赤面してもじもじと答えた。

「い、いえ、私は・・・。」

そこをアーチェは鋭く勘付いた。

そしてニヤニヤを消すことなく追求した。

「ふふふ・・・あげるのね?」

ミントは、何故自分は気付かれやすいのだろうと疑問を残しながら、アーチェ問いにしぶしぶ答えた。

「・・・はい・・・。」

アーチェは勝利の笑みを掲げながら、今度はすずの方へ向いた。

「すずちゃんは?誰かにあげるの?」

「・・・バレンタインデーって何ですか?」

すずは不思議そうな顔を向けてアーチェに訊いたが、アーチェはもっと不思議そうで間の抜けた顔をして言葉を返した。

「・・・・・・え・・・?」

さっきのニヤけた顔とこの顔では、似ても似つかない違いがあった。

今時バレンタインデーを知らない女子がいたのに驚きと不思議さでいっぱいのアーチェに代わって、ミントが丁寧に弁解してくれた。

「女性が、想っている男性にチョコレートをプレゼントする日なんです。義理っていうのもあって、親しい人なんかにもあげますよ。」

すずはちょっと俯きながら言った。

「・・・そうなんですか。私には・・・あげる相手はいません。」

やっとアーチェは驚きがやっと消えたらしく、普段の顔に戻って喋り始めた。

「そっかぁ。忍者の里にはそんな風習なさそうだもんね〜。」

あ、とふと何かを思い出したような声をあげたアーチェ。

「ところでミント・・・チョコレート、もう作った?」

ミントはまた少し顔を赤らめながら小声で喋った。

「まだ、作っていません・・・。」

そして普段の声の調子に戻り、顔を上げてアーチェに問いかけた。

「でも何でそんなこと訊くんですか?」

今度はアーチェが赤面する番だった。

「えっと・・・そのぉ・・・えっとぉ〜。」

上へ左へ下へ右へと目が忙しそうに動くアーチェ。

動揺を全く隠せていない証拠だ。

「・・・そう!自分で食べたいの!」

困ったあげくに「自分で食べたい」と嘘言ったアーチェが、どこか可愛く思えたミント。

クスッとアーチェに気付かれないように少し笑って、微笑を残したまま返事をした。

「わかりました。では一緒に作りましょうね。」

アーチェの嘘にちゃんと気付いているミントだが、あえて追求はしないであげた。

そこに隠れながらミントの優しさがとても表れている。

「ありがとうミントォ〜!あ、せっかくだしぃ、すずちゃんも一緒に作ろうよ!」

ミントを誤魔化せたと思って、有頂天なアーチェはすずを誘う。

が、すずは一瞬焦ってすぐに首を振った。

「わ、私は遠慮します・・・。」

それをアーチェが黙っていないはずがない。

彼女はすかさずこう言った。

「いいのいいの。あのしがないおっさん(三十路間近のクラースさん)にでもあげなさいよ♪」

「え、え?」

すずはさっき一瞬見せた、普段は絶対に見せない困惑の顔を見せた。

すずが表情を変えるのは珍しいことなので、よっぽどアーチェの誘いに困っているのだろう。

そこへ、武器屋から買い物を終えた男性陣達が通りすがった。

「・・・ミントたちは何をやってるんだろう?」

向こうの通りで、何やら通りで立ち止まって喋っている、女性陣を見たクレスが不思議そうに言った。

それに対しチェスターは、歩きながら不満そうな声をあげた。

「さっきからうるさいぞあのバカ女・・・。だいたい食料の買出しは終わったのか?」

「まぁいろいろとあるのだろう。さ、次は今日の宿屋を確保しに行こう。」

クラースは2人を促し、足早に宿屋へ向かった。

・・・女性陣より男性陣の方が、実はこういう買出しなどの仕事に向いているのだろうか・・・?




数日後。

ひとつの小さな町に着いた。

人口こそ少なそうだが、人々はどの人も笑顔で道を歩いている。

それとは正反対に、今日も長時間歩いたり、途中魔物との戦闘も数回あったりしたために、随分疲労がたまっている一行。

しかし何とか最後の力を振りしぼって、ようやく宿屋に着いた。

その代わり、ぐたーっとした5人と、疲れた様子もなく普通にしている1人の少女を見た宿屋の受付人は、少したじろいで、そのまま3秒間くらい放心状態となってしまったみたいだ。

すぐにクラースがはぁーとため息をつきながら、両手をパン!とたたいた。

途端に、受付人は何もなかったようにクレスたちのアカウントを取り始めたのがおもしろいところだ。




部屋は二部屋で、当たり前に男性と女性とで別れ、ようやく女性陣のみとなった。

ドアを閉めてからアーチェが早速口を開いた。

「そろそろ材料を買いに行こうよ!バレンタインデー、もう明日だよ。」

ちょっと焦りながら言ったアーチェだが、ミントは至って冷静に言葉を返した。

「あ、早く買わないと売り切れてしまいますよね。」

二人のやり取りを見ていたすずが、ぼそりと呟いた。

「私も結局、作るのでしょうか・・・?」

それをアーチェは何故か一文字も聞き漏らさなかった。

「もちろん☆じゃ、行こう!」

と半ば強引にすずも引き連れ、町の一番大きい店に着いた3人。

しかし、先程冷静に言ったミントの言葉は的中していた。

本人は全く当らないと思っていた。

なぜならもし、の場合だから。

「チョコレートの材料かい?そんなのもうとっくに売り切れたよ。なんせここは小さな村だしねぇ。」

この言葉にアーチェは、店の何処にいても聞き取れるようなえー!?という叫び声を出し、ミントはえっ!?と上品に口元に手を近づけただけだった。

すずに関してはアーチェと真逆で、いつもの通り何も言わずに表情も変えなかった。

ただ、反応したという点では店員のセリフのあと、素早く耳に手をあてたくらいだ。

おかげですずだけが、この店内で耳がジンジンしていない唯一の人間だ。

そんなわけでチョコレートの材料を手に入れられなかった女性陣。

しかし、こんなことで諦めるような3人ではなかった。(本当は2人諦めていたが、約1名が2人を全く諦めはさせなかったのだ)

店の外に出てから、3人の(30秒)会議が行われた。

固まって探しては、いくらこの町が小さいからといって全部の店は確実にまわれない。

すずの提案で、3人はそれぞれ分かれて材料を探すことになった。